フィルムに光が当たる(露光する)と、当たった光の量に応じて化学反応が起きて画像が形成されます。実際には露光しただけでは目には見えない潜像状態で、画像として見えるようになるのは現像のプロセスによってです。当然ですが、フィルムには画像が形成される最小限の光の量及び飽和して記録しきれなくなる限界の光の量とがあります。量というのは光量子の量というか数。なので単位にmolを使うことも。それはともかく、被写体からの光の量をちゃんと適度な濃さの像になる範囲にうまく収めるようにするために、絞りとシャッターとを制御してフィルムに当てる光の量=露光量、すなわち露出をコントロールする必要があります。
さらっと光「量子」と書きましたが、実は写真には量子力学がわりと分かりやすく関わっていたりする。とはいえ普通に撮る分には詳しく理解する必要もないし私もブルーバックスを読んだ程度(分かったとは言わない)だし、何より銀塩写真は量子力学より前からあるから大丈夫(なにがや)。
絞り値については被写界深度のところでも触れましたが、大雑把に言えばレンズの口径を表します。普通は単に「絞り」と言いますが、より正確には「開口絞り」と言います。顕微鏡を使う人にはおなじみの用語ですね。当たり前ですが、開口絞りでレンズの口径を絞ると開口面積が小さくなり、像は暗くなります。でも像の明るさを示す数値として、口径そのものでは使いやすくありません。同じ開口面積でも焦点距離によって明るさが違います。超大雑把に言えば、同じ大きさの窓がある部屋で、窓の近くと遠くとでは明るさが違う、ということからイメージできるかと思います。窓との距離、つまり焦点距離に左右されるので、生の口径や生の開口面積そのものでは便利ではありません。
顕微鏡を使う人なら、絞りにはもう一つ「視野絞り」があることを知っているはず。知っていて、お願い。これは顕微鏡では照明が当たる面積をコントロールするものだが、フィルムカメラにおいてはフィルムの感光膜面にマスクを掛けるのが「視野絞り」に相当する。被写体側の対物レンズから離れたところにマスクをおいても視野は制限されるが、ちょっと意味不明。フィルム膜面のマスクでも意味不明?ところが、実はこれが流行った時期がある。1990年頃に流行した「パノラマ写真」。当時のレンズ付きフィルムには「パノラマ」を謳うものがあった(いわゆる「カメラ」にあったかどうかは憶えていない)。これは、専用ボディを利して普通の写真2コマ分を使ってワイドに撮影するもの、ではない。普通サイズの一コマの上下にマスクを掛けて縦横比を変えたもの。このマスクが視野絞りに相当する。フィルムの上下を無駄にする感じが嫌いであまり使わなかった。
焦点距離に左右されずにレンズが結ぶ像の明るさを示す指標として、「絞り値」が使われます。被写界深度のところでも書きましたが、絞り値は「焦点距離÷口径」で、F値やFナンバーと呼びます。レンズのスペックを言う場合には、絞りを最大に開いた(開放にした)ときのF値(開放F値)を使い、明るい標準レンズがF1.4だとか、超望遠300mmレンズでもF2.8 (通称サンニッパ)はすごく高いのでもう少し口径が小さくて安いF4.5を使っているとか、そんなふうに使います。
絞りの設定値は、絞り値といったりF値といったりします。絞られたレンズの口径で焦点距離を割った値で、小さいほど明るく、大きいほど暗くなります。レンズの性能としてのF値は開放F値のこと。たいていのオールドレンズ(この場合は電気接点やアクチュエーターを持たないという程度の意味)ではレンズの絞りリングで設定します。開放F値1.4のレンズでも実際には開放で使うことはあまりなく、ふつうはF2.8とかF5.6とかに絞り込んで使います。
絞り値は1段絞ると光量が半分になり、絞り値の系列は概ね√2倍の系列になっています。像の明るさを決めるのはレンズの開口面積です。レンズの開口面積は、絞られたレンズの半径の二乗に比例します。ですから、開口面積が2倍になるのは半径が√2倍(約1.4倍)になるときです。半径が2倍になったら面積は4倍。だから開口面積が2倍ごとになる系列は、口径(むろん半径はその1/2)が√2倍になる系列になります。たとえば、開放F値が1.4のレンズ、私が大昔から使っているAi Nikkor 50mm F1.4Sでは、絞り値は1.4, 2, 2.8, 4, 5.6, 8, 11, 16となっています。1段絞ると光量が半分になります。レンズによってはF22, F32ともっと絞れるものもあります。
絞り値は光量の他に被写界深度と密接に関わっていますが、特にオールドレンズではその他にもいろいろなところに影響があります。例えば、上記の通り開放F値1.4のレンズでも数段絞って使うのが普通なのは、開放ではどうしても描写が甘くなったり、明るいレンズで特に顕著な現象ですが周辺減光が出たりするからです。
周辺減光というのは、文字通り画面の周辺部が暗くなる現象です。周辺部、つまりレンズの光軸に対して斜めに入る光に対しては一番前のレンズの口径が足りず、口径食が起きるせいで発生します。フィルムカメラの場合には(デジカメではセンサーの問題があるらしいが、知らぬ)。レンズは仮想的には1枚の凸レンズと考えることができます。1枚レンズでは各種の収差(ぼやけたりにじんだりする)などの不都合が生じるので、それを補正するために実際のレンズでは仮想レンズ(主点、正確には像側主点)の前後に複数のレンズ、場合によっては屈折率や分散特性が異なるガラス素材を使ったレンズを組み合わせて、収差を補正した光学系を構成します。厚みのある光学系となるため、斜めの光線に対しては、主点から離れた前玉のレンズの口径が制約となって口径食が起きてしまうことがあります。それをどこまで許容するかは、コストを含めた設計次第。経験上F1.4のレンズでは(レンズにもよるでしょうが)F2.8くらいまで絞れば周辺減光はかなり回避できます。しかし敢えて周辺減光を起こして演出に利用することも可能です。
ツッコミの対義語ではありません。いや、木瓜(ぼけ)ではないと書いた方が教養があるふりをできたか。いずれにせよボケですな。ややこしいボケですみません(最後のボケだけはツッコミの対義語であるボケ)。ともかく、画面のピントが合っていないところでは像がぼやけますが、ぼやけること、あるいはぼやけ方のことをボケと言います。点光源はピントが合っていれば(相応の収差はあるにしても原則的には)点像に写りますが、ピントが合っていないとレンズ固有のボケを見せます。例えば、極端な例としては反射鏡を使ったシュミットカセグレン光学系(*1)のミラー超望遠レンズがありますが、これの場合は中央のサブミラー部分が抜けたリング状のボケになり、ドーナツボケとも呼ばれます。レンズの設計によって「ボケ味」が異なり、レンズを使い分ける理由になったりします。そこまではとても語れませんが、分かりやすいところでは上記の周辺減光、口径食が起きているときは、画面周辺部の点光源に起因するボケの一部が本来の円形から一部欠けてレモン型のボケになります。時にはそのボケの形自体を絵作りに使ったりもします。絞りを開いて被写界深度を浅くするのも、ボケを使った絵作りの一種です。奥が深い。きっと沼だ。間違いない。
*1 : シュミットカセグレン光学系とは、天体望遠鏡でよく使われる反射光学系の一種。マクストフ式もこれに近い。鏡筒先端に複雑な断面の補正板を設け、比較的短焦点で中央に穴の開いた凹面鏡である主鏡の光軸上、焦点近くに小型の副鏡を同軸に配置し、凸面鏡である副鏡で折り返した光を中心の穴を通して接眼レンズ(カメラ)に導く。非球面反射鏡だけで構成したカセグレン光学系もある。カメラレンズにはそれらの派生形が用いられているのだろうが設計次第。反射を主とした光学系なので、屈折に起因する色収差は補正板でわずかに生じるだけ。長い焦点距離をコンパクトな鏡筒で実現できるのがメリット。
もっともデジタルカメラでは、撮影時には広い範囲にピントが合った画像を取得しておいて、後から演算処理で望むようなボケを付け加える、という処理が行われることもあるそうです。ですが、そういうの個人的にはあまり趣味ではありません。そのような演算ボケを加えた画像は、「敢えて言おう、CGであると!」。私の趣味的にはね。もちろんCGの芸術性についてケチを付ける気は毛頭ありません。
シャッタースピード(露出時間)は、絞りに比べるとずっと分かりやすいですね。シャッターが開いてフィルムに光が当たっている時間です。だいたい倍数の系列になっていて、1秒より短い方だと1/2, 1/4, 1/8, 1/15, 1/30, 1/60, 1/125, 1/250, 1/500, 1/1000, 1/2000, 1/4000秒という並びが一般的です。たいていの一眼レフではこの他に長時間露光用のB (バルブ)というポジションもあり、シャッターボタンを押している間ずっとシャッターが開いています(*2)。T (タイム)のあるカメラは少ないですが、これはシャッターボタンを押すとシャッターが開いて開きっぱなしになり、もう一度押したりシャッターダイヤルを動かしたりすると閉じるという機能です。
*2: バルブ(B)での長時間露出のために手で何分もシャッターボタンを押し続けることは無理。フィルムカメラの時代には、当時一般的だったケーブルレリーズというアクセサリーを使った。大抵のフィルムカメラのシャッターボタンにはレリーズ用の円錐ネジ穴があり、ケーブルレリーズはそこににねじ込んで使う。他に長いチューブとゴム球のエアレリーズというのもあったが使う場面が違う。ケーブルレリーズは、三脚を使うときカメラに手を触れて振動を与えることを最小限にしてシャッターを切るため&バルブ撮影をするためのもの。ただし三脚を使う動体撮影では雲台(カメラを固定する自在マウント)のネジを少し緩めての三脚手持ち撮影も普通に行った。それもあり個人的には自由雲台(ボールマウント)派。
ケーブルレリーズの構造は、大雑把にはワイヤーでできた外筒と、その中を動くプッシュ動作のワイヤーケーブル。シャッターボタンの円錐ネジ穴に固定した外筒の中のケーブルの先端金具でネジ穴の底を押すことで、シャッター機構を動作させる。バルブで開きっぱなしにするには、押した状態で横から押しねじで止める分かりやすいものもあったし、後には押すとストッパーがかかって押したままになり、同軸の開放リングを押すと戻るものが一般的になった。このタイプの場合、バルブ撮影以外の場合はいちいちロックされないよう、普段はストッパーリングを外筒にねじ込んむなど固定してフリーにして使う。
フィルム一眼レフのシャッターは、フォーカルプレーン(焦点面)シャッターといって、フィルムの直前(レフレックスミラーの後)に2枚のシャッター幕がある形式です。シャッターボタンを押すと、最初は閉じていた1枚目(先幕)が走ってシャッター開き、露光が始まります。次いで所定の時間が経過すると先幕を追いかけるように2枚目(後幕)が走ってフィルム面を再び覆い、露光が終了します。先幕が走って露光が始まってから後幕が走って露光が終わるまでの時間が露出時間で、シャッタースピードといいます。ただし、シャッター幕が走るスピード(幕速、後述)自体は変わりません。後幕が走り出すまでの時間が長いと、長い時間フィルムに光が当たることになります。
同じフォーカルプレーンシャッターでも、構造的には横走りと縦走りとがあります。100年ほど前にドイツのオスカー・バルナックが開発した今のフィルムカメラの原型にあたるバルナック・ライカは、横走りフォーカルプレーンシャッターでした。材質はゴム引き絹布幕で、100年近く経っても使えるのがウソみたいです。なお、この頃のカメラは今ではレンジファインダー(距離計)カメラと呼ばれています。レンズ交換式なのでボディだけでシャッター機構を構成する必要があったため、フォーカルプレーンシャッターを搭載していました。レンズ固定式の場合はリーフシャッターをレンズ内に組み込んだレンズシャッターが採用されるのが普通だったそうですが、詳しくは知りません。
昔のフォーカルプレーンシャッターはゴム引き布幕なので、レンズが太陽に向くと虫眼鏡と一緒でシャッター幕が焼けてしまう恐れがありました。これを防ぐためには必ずキャップをする、ケースにしまう、沈胴式なら畳んでおくといったことが推奨されていました。レンジファインダーカメラでキャップを取り忘れる事故は、使ったことがあれば誰でも経験したと思います(ない?)。大昔の沈胴式のエルマー50mmを繰り出し忘れて撮影したつもりになったことも、はい確かにあります。一眼レフでは普段はミラーが下りているのでシャッター幕を焼く事故にはなりませんが、ファインダースクリーンや露出計の測光素子を焼いていいわけはもちろんありませんので、私は晴天では出来る限りレンズキャップをするようにしています。なお、1959年発売のニコンFのフォーカルプレーンシャッターの素材はチタン(わずかな初期ロットを除く)で、1980年発売のF3まではチタン幕の横走りです。
縦走りフォーカルプレーンシャッターは、いつからあるものなのかは知りませんが、1982年のFM2で1/4000秒を実現するのには六角形に肉抜きした縦走りチタン羽根シャッターが用いられていました。横走りチタン幕はシャッタードラムに巻き取られる柔軟な金属薄膜であるのに対し、縦走りチタン幕は先幕・後幕ともに複数の剛体の羽根で構成されています。実物を見れば分かりますね。シャッターをチャージした(フィルムを巻き上げた)状態では先幕が展開してフィルム面を覆っており、後幕はフィルム面の上に重ねて格納されています。
シャッターを切ると先幕が走って露光が始まり、設定した露出時間後に後幕が走ってフィルム面を覆い、露光が終了します。縦走りタイプはシャッター羽根が走る行程が短く、なおかつ分割された個々の羽根の質量が小さいので、幕速の高速化に有利なんだとか。薄膜と剛体とでは質量が違いそうな気もしますが分割されている点が有利なのかも知れません。なお、習慣的に幕速はシャッター幕がフィルム面を端から端まで走り終わるのに要する時間で示します。例えば「幕速3.3ms」(3.3ミリ秒)など。これはたしか縦走りのNewFM2の幕速で、横走りだと1/2000秒が出せるF2で10msくらい。縦横で距離が違うのでそのまま比較はできません。
シャッターの関係でちょっと寄り道。1/4000秒などの高速シャッターでは先幕と後幕との間は狭いスリットになっていますが、もっと遅いシャッタースピードでは先幕が走り終わってから後幕が走り出します。つまり、フィルムの全体に光が当たる時間が出来ます。このタイミングを狙ってキセノン放電管の閃光で照明を行えば、光が足りない暗い条件でも明るく照らされた写真を撮ることが出来ます。いわゆるフラッシュ撮影またはストロボ撮影です(*3)。ニコンはなぜかスピードライトと呼びます。1/4000秒シャッターを初めて実現したFM2では、1/200秒以下がその条件を満たすシャッタースピードでした。しばらくして発売されたNew FM2ではさらに幕速が上がって、1/250秒という一般的なシャッタースピードの系列に収まる数値になりました。
*3: 今ではフラッシュ撮影の閃光はキセノン放電管やスマホなどではLEDのパルス駆動でも実現されているが、かつてはアルミニウムやマグネシウムなどの金属の燃焼によって得ていた。マグネシウム粉末は空気中で閃光を放って燃焼する。アルミニウムやジルコニウムは酸化剤とともに電球状のガラス球に封じて販売されていた。通電することで点火燃焼するフラッシュバルブ。電球状だが使い捨て。ゴジラ(1954)などの初期の怪獣映画では、記者会見のシーンでカメラマンが1枚撮るごとにフラッシュバルブを交換しているのが描写されている。丸いアンブレラの中心のもの。
1980年代にもまだフラッシュバルブが量販店で手に入ったので、面白がって使ってみたこともある。発光色そのままでは白熱電球のように赤みがかるので、カラー用は青いフィルムコートがかかっていた。その頃までは、発光器(フラッシュガン)とフラッシュバルブの組み合わせの方が、同じパワーのストロボよりはるかに軽量コンパクトだった。バルブ交換の手際がよければストロボのチャージより早いというメリットもあった。
フラッシュバルブにはフォーカルプレーンシャッター用に燃焼時間が長いFP級というものがあり、カメラ側にそれに合わせたタイミングで動作するFP接点があれば、先幕が走り出す前に燃焼を開始させて後幕が走り終わるまで閃光を維持させることができた。もちろん高速シャッターでは相応に光量が制限されてしまうので、光の全部を活用できるわけではない。キセノン(Xe)放電管の閃光はもっと短時間なので、専用のX接点を使ってシャッター全開の間に閃光が終わるようになっている。シンクロスピードといえば、通常はシャッターが全開になるシャッタースピード、Xスピードのこと。でも1/200秒ではフラッシュバルブの燃焼は間に合わなかったような気がする
撮影条件によっては、昼間にストロボを使用することもあります。昼光シンクロ、デーライトシンクロなどと呼びます。X接点を使ったストロボシンクロ撮影なので、シャッタースピードはXスピードが上限になります。なぜ昼間なのにストロボを使うのかと言えば、いろいろな理由がありますが、逆光などで背景に対して被写体が暗いときに使うのが一般的でしょう。このような条件で被写体に無理矢理露出を合わせると、背景が白飛びしてしまったり輪郭が滲んでしまうことになります。普通なら助手にレフ板を持たせるか大がかりなレフ板用の架台を用いるとかして光を補う場面です。レフ板のメリットは不自然な輝点や陰影の映り込みを起こさない点と撮影前に照明の具合を確認できること、助手に命令して照明の加減をコントロールできること(最後のはスタンドでは不可能)。デメリットは助手またはスタンドが必要なこと。スタンドには風に弱いという弱点もあります。さらに大がかりにレフ板にライトやストロボを向けたりしてバウンス撮影(間接照明による撮影)を行うこともありますが今は措きます。いや語るほどのものは持っていないのですが。
助手抜きで本人が手で持つ機材だけで撮影するためには、背景光を抑えるために絞りをなるべく絞った上で、被写体に対してはストロボを焚きます。シャッタースピードも上げたいところですが限界があり、ストロボを使うためXスピード、1980年代後半以降なら1/250秒が上限です。1970年代までは1/60秒くらいだったので、2段早くなっています。ストロボ光は閃光なのでXスピードが速くなっても光量は変わりませんが、背景は定常光なのでシャッタースピードが早くなると光量が減少します。1/60秒から1/250秒になると背景光が2段分減ることになるので、シャッタースピードの影響を受けないストロボ光が相対的に4倍(2段プラス)になったのと同じことになります。シャッターの高速化はこんなところにも効いています。
ストロボに触れたらガイドナンバー(GN)に触れないわけにはいきません。ストロボのスペックのうち最大光量はGNで示されます。GNとは、絞り値と被写体までの距離(m)とをかけたものです。GN16のストロボなら、絞りF4の時に4mの距離にある被写体が適正光量になります。GN32ならF4で8mです。照明に関してはカンデラ(cd)とルーメン(lm)とルクス(lx)との関係とかがきちんと分かっているべきですがそれは今は措きます。光合成の話をするならルクスよりPPFD (mol/m^2s)ですね、ってそれは措くって言うの!
ストロボ撮影では、閃光時間が短いので基本的にシャッタースピードは意味を持たず、被写体の照度(lx)と絞り値だけが問題になります。ほぼカメラと同じ場所から発せられるストロボ光は、被写体までの距離が遠くなればなるほど弱くなります。火星を照らす太陽光は地球での太陽光より弱いようなものです(どんなたとえやねん)。具体的には距離の二乗に反比例します。しかし実用上は二乗が入ると面倒くさいので、√を取った値を使います。実際にはGN32のストロボはGN16の4倍の明るさです。
ストロボを使ったマニュアル撮影をする場合、ピントを合わせて距離指標を読むなり目測するなりして被写体との距離が何メートルあるかの見当を付け、それでGNを除します(割りますという方が分かりやすいですが)。そうして得た値を絞り値に設定します。GN20のストロボで距離が5mなら、20÷5で答は4です。なので絞りはF4に設定します。単純ですね。単純じゃないと実用になりませんし。ストロボの出力は全開固定が普通です(でした)が、明るすぎるときはディフューザー(拡散板)を入れてGNを下げます。光が広い範囲に拡散すれば被写体を照らす明るさは下がる道理です。どのくらいGNが下がるかはディフューザーの特性次第。設定でパーシャル出力に出来るストロボもあるみたいですが見たことがありません。
ストロボの自動調光というのは、少なくともフィルムカメラの時代はなかなかの難物でした。例えば屋外など背景にストロボ光を反射するものがない状態で人物だけがいると、しばしば露出オーバーの白塗りお化けになってしまいました。これは外部自動調光で特に顕著でしたが、ストロボのセンサーで反射光量を測定し(積分というと読む気が失せますね)、積算の反射光量が十分になるところで発光を停止するという制御だったせいです。背景に何もない夜間の屋外では、ストロボのセンサーは人物に当たった光だけを受けます。センサーがどういう測光パターンかにもよりますが、単純な平均測光で照射面積の1/10を人物が占めるなら、人物は光を返さない9/10の何もない空間の分まで光を反射しなければなりません。つまり、適正露光の10倍の量の光を反射するまでストロボの発光は止まりません。だから露出オーバーの白塗りお化けになってしまう。個人的にはそれがいやでストロボ撮影はマニュアルばかりでした。だってほらマニュアル人間だし(意味が違ーう!)。