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香川聡(かがわ あきら)
所属
〒305-8687茨城県つくば市松の里1
森林総合研究所 木材特性研究領域
組織材質研究室 香川聡(主任研究員)
生年月1973年3月
専門分野
同位体年輪気候学、木材解剖学、組織材質学、年輪化学(Dendrochemistry)
森林総研本所の安定同位体比分析用の質量分析計(Thermo Finnigan MAT252 + CE Instruments NC2500)の保守・管理も行ってきた。
違法伐採・木材産地偽装対策のため、木材の同位体フィンガープリントを用いた木材の産地判別法を開発している。
13CO2(99%)パルスラベリング法により、東シベリアのカラマツの春・夏・秋の光合成産物の年輪形成への利用・各器官へのカーボンアロケーションを調べている。
温暖化が樹木の成長に与える影響評価のため、シベリア地域で同位体年輪気候学的研究を行っている。
キーワード
安定炭素同位体比(δ13C)、安定酸素同位体比(δ18O)、年輪、温暖化、無機微量元素
研究分野
林産科学・木質工学、林学・森林工学、環境動態解析
学位論文
“Physiological basis for carbon isotope dendroclimatology in Siberia” 北海道大学論文博士(地球環境、2006年9月)
略歴
平成20年9月〜現在 独立行政法人森林総合研究所組織材室研究室主任研究員
平成19年3月〜平成20年8月 ドイツ国ユーリッヒ自然科学研究所へフンボルト財団奨学生として出向(平成19年12月森林総合研究所主任研究員)
平成11年4月〜平成19年2月 独立行政法人森林総合研究所木材特性研究領域組織(材質)研究室研究員
平成10年4月〜平成11年3月 京都大学理学研究科生物科学専攻(生態学研究センター)博士後期課程中退
平成8年4月〜平成10年3月 京都大学農学研究科地域環境科学専攻バイオマス循環論講座修了
平成8年3月 京都大学農学部林産工学科卒業
業績
Kagawa A., Leavitt S.W. (2010) Stable carbon isotopes of tree rings as a tool to pinpoint the geographic origin of timber. Journal of Wood Science 56. DOI 10.1007/s10086-009-1085-6 (Abstract, email me for PDF)
Kagawa A. Physiological processes of carbon isotope signal transfer from leaves to tree rings. Stable Isotope Dendroclimatology - Physiology, Systematics, Chronologies & Instrumentation. Eds. G.D.Schleser, G. Helle, S.W.Leavitt et al. Springer.
Kagawa A., Sugimoto A., Maximov T.C. (2006) 13CO2 pulse-labeling of photoassimilates reveals carbon allocation within and between tree rings. Plant, Cell and Environment 29, 1571-1584. (PDF)
Kagawa A., Sugimoto A., Maximov T.C. (2006) Seasonal course of translocation, storage, and remobilization of 13C pulse-labeled photoassimilate in naturally growing Larix gmelinii saplings. New Phytologist 171, 793-804. (PDF)
Kagawa A., Sugimoto A., Yamashita K., Abe H. (2005) Temporal photosynthetic carbon isotope signatures revealed in a tree ring through 13CO2 pulse-labeling. Plant, Cell, and Environment 28(7) 906-915. (PDF)
Kagawa A., Naito D., Sugimoto A., Maximov T.C. (2003) Effects of spatial and temporal variability in soil moisture on widths and δ13C values of eastern Siberian tree rings. Journal of Geophysical Research 108(D16), 61-68. (PDF)
Kagawa A., Aoki T., Okada N., Katayama Y. (2002) Tree-ring strontium-90 and cesium-137 as potential indicators of radioactive pollution. Journal of Environmental Quality. 31, 2001-2007 (PDF)
所属学会
日本木材学会
日本生態学会
International Association of Wood Anatomists (国外)
American Geophysical Union (国外)
資格・免許
TOEIC980点、英検1級
第1種放射線取扱主任者試験合格
普通免許・中型2輪(日本・欧州)
プロジェクト
(研究代表者として)
2011年度−2012年度 環境研究総合推進費 革新型研究「東南アジアにおける違法伐採・産地偽装対策のためのチーク産地判別システムの開発 」2173万円
高精度(σ=0.1−0.2‰程度)で酸素同位体比が測定できる高温熱分解型元素分析計(Hekatech社HTO)を導入し、ミャンマー産・インドネシア産の
チーク材の酸素・炭素同位体比、年輪幅データベースを構築した。日本の木材に比べて個体間の同調性はやや劣るものの、酸素同位体比を用いてチークの
産地判別が可能であることを証明した。
余談:このプロジェクトでミャンマーに出張したときに2週間ほどひどい下痢にかかり、抗生物質を飲みすぎたのがきっかけで
そのあと1年ほど体調が悪かった。そのためあまり多くの結果は出せなかったが、なんとか報告書を提出することができた。
でも、この一件きっかけで今までの人生で自分がずっと貧血であったことがわかり、現在は以前に比べて(20代のときよりも
体力があるくらい)元気である。というわけで、このプロジェクトは私に健康という思わぬ副産物をもたらしてくれた。
「人間万事塞翁が馬」とはこのことですね。以前より元気な今は研究に打ち込んで、同位体分析の自動化を行い、産地判別の
コストを下げてぜひとも木材の産地判別の実用化を実現したいと思う今日この頃。
2009年度−2012年度 科学研究費補助金 若手A「違法伐採・産地偽装対策のための木材産地識別技術の開発 」740万円
低精度(σ=0.5‰程度)酸素同位体比分析・炭素同位体比分析により、主に国産材の産地識別のための同位体データベースを構築する。国産材の
産地識別の精度は、酸素同位体比の分析精度、同位体を分析する樹木の空間密度に依存するので、最高の精度(σ=0.1−0.2‰)で酸素同位体比が
分析できる機器(Thermo Fisher TC/EA、1200万円)の導入が望ましい。しかし、本課題では予算オーバーのため、現行の施設でも可能な低精度での酸素
同位体比分析により、日本産木材の分析を10地点程度で行うことにより、木材の産地識別の予備的研究を行う。
2006−2007年度 科学研究費補助金 若手B「東シベリアにおける同位体年輪気候学的解析のための基礎研究 」220万円
2004−2005年度 科学研究費補助金 若手B「地球温暖化への東シベリア樹木の応答-炭素同位体分析による年輪気候学的研究- 」130万円
(不採択課題)
2009年度 環境省 平成21年度地球環境研究総合推進費革新型 「13CO2ラベリングによる樹木個体レベルでの炭素収支モニタリング技術の開発」
2009年度 農林水産省 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 イノベーション創出基礎的研究推進事業
技術シーズ開発型(若手枠) 「高精度酸素同位体比分析による木材の産地認証システムの開発」
現在日本の酸素同位体比技術の状況
食品の産地偽装問題のため、食品の産地を同位体分析により判別する技術がある。同位体分析の中でも酸素・水素同位体比分析は産地判別に最も有効である。しかし、
現在の日本の固体有機物試料の酸素・水素同位体比分析技術は低く、分析誤差がσ=0.3−0.5‰程度である。1500℃での試料の高温熱分解を可能にする
Hekatech社やThermo社の高温熱分解型元素分析計を改変することにより、σ=0.1−0.2‰の分析精度が実現できる。香川聡はHekatech
社というベンチャー企業をスタートさせたドイツ・ユーリッヒ自然科学研究所(Forschungszentrum Juelich)に1年半留学し、世界最高精度の酸素同位体比分析
技術を習得した。そこで、森林総研に高温熱分解型元素分析計を導入し、同分析技術を日本で酸素同位体比分析を行う研究機関・企業に提供することにより、木材だけで
なく食品の産地判別の精度を向上したいと考えている。
木材の産地判別法の原理(ドイツ留学中だった2007年に考案)
リンク
“Wood chemistry used to track origin of timber“ by Rhett A. Butler
科学のまちから:森林総合研究所 木材の産地を見抜け (毎日新聞記事)