おかげさまで本研究会は47名の参加者がありました。講演を快く引き受けてくださった石田厚、森茂太、韓慶民、宮崎裕子、中塚武氏をはじめ、話題提供者、その他協力して下さった方々に感謝します。今後、この研究会での発表・議論から、新たな同位体手法の木材研究への応用・発展が生まれることを願っています。

 森林総合研究所で年輪等有機物試料の炭素・酸素同位体分析をされたい方は、是非香川までご相談ください。同位体を測定してみたいと思っている年輪気候学者をはじめ、より多くの人に当所の同位体分析施設を利用していただけるよう、共同研究者を募って外部資金に申請し、分析のための滞在費・施設・分析補助スタッフの充実をしていきたいと考えています。皆さんが気候復元のために作られる同位体クロノロジーは、そのまま我々の国産・アジア産材の木材産地識別研究にも役立つので、一石二鳥なのです。欧米ではすでに年輪の同位体ネットワークが構築されていますが、

http://www.isonet-online.de/

http://www.ncdc.noaa.gov/paleo/treering/isotope/iso-drought.html

IPCCからも指摘されているように、今後はクロノロジー密度の低い、(東)アジア地域での同位体ネットワークを構築することが重要になってくると思われます。Milleniumスケールの古気候復元のためにも、木材の産地識別のためにも、同位体ネットワークの構築が必要です。

 また、貯蔵物質の木材形成への利用など、カーボンアロケーション研究のための13C(99%)トレーサー試料の分析にも対応していきたいと思っています。

 

2009年度 木材学会組織と材質研究会 秋期シンポジウム・樹木年輪研究会 合同開催

 

葉から年輪までの同位体シグナル伝達プロセス

−光合成・呼吸・転流・貯蔵・年輪形成−

 

 

以下の内容で組織と材質研究会・樹木年輪研究会の合同シンポジウムを行います。多数の参加をお待ちしています。

 

 年輪気候学は、年輪幅・密度・安定同位体比等を用いて過去の気候(温度・降水量等)を復元する分野である。光合成産物の炭素同位体比は主に光合成時の水利用効率に依存し、それゆえに光合成時の環境条件を反映する。この炭素同位体比シグナルはその後呼吸・転流・貯蔵プロセスを経て年輪に記録されるので、古気候復元が可能になる。統計的手法により、気候因子と年輪の同位体比・年輪幅等との間に有意な相関があることが多数報告されているが、気候因子と年輪パラメータとの相関の背後にある樹木生理学的な因果関係はブラックボックスのままである。そこで本シンポジウムでは、(同位体)年輪気候学に関係した光合成生産から年輪形成までのプロセス、すなわち光合成・呼吸・転流・貯蔵・年輪形成に焦点を当て、年輪形成過程の統一的理解を目指す。

 

 

日時:9月12日(土)−14日(月) 一日短縮しました

場所:森林総合研究所大会議室 〒305−8687 茨城県つくば市松の里1

参加費無料、懇親会費有料 一般6000円、ポスドク3000円、学生1500円程度に変更しました。

宿泊:筑波農林研究団地宿泊施設 (一泊1500円程度、無線LAN有)

 

プログラムPDF版、会場までの地図、要旨集目次)

 

9月12日(土)午後 組織と材質研究会

(森林総研へはJR牛久駅13:05発 関東鉄道バス谷田部車庫行きが便利です。車での来場も可)

 

13:30 幹事挨拶

13:40−14:00 シンポジウムの趣旨説明 森林総研・組織材質研 香川聡

14:00−14:40 呼吸 森林総研・植物生態研究領域 森茂太 「樹木の呼吸 −実生から巨木へ−」 

 

休憩14:40−15:00

 

15:00−15:40 転流・貯蔵1 森林総研・物質生産研 韓慶民 「窒素および炭水化物の貯蔵機能の評価に基づくブナ林堅果の豊凶作のメカニズムの解明」 

15:40−16:20 転流・貯蔵2 北海道大学 宮崎祐子「光合成同化産物の転流・貯蔵・繁殖器官への分配 -13Cトレース法による追跡」 

 

休憩 16:20−16:40

 

16:40−17:20 年輪形成 名古屋大学大学院環境学研究科 中塚武「季節−年レベルの樹木年輪同位体比が語る過去の気候」

 

18:30〜21:00 懇親会 ラ・テラス・ドゥ・オエノン筑波農林研究団地宿泊施設への送迎バス有、メニューはこちら) 

 

 

9月13日(日) 樹木年輪研究会

(筑波農林研究団地宿泊施設からは関東鉄道バス谷田部車庫行きが便利です)

 

(基調講演)

8:50−9:30 光合成 森林総研・樹木生理研 石田厚 「光合成の水利用効率と炭素同位体比」 

 

(研究発表:発表15分、質疑5分の計20分間)

9:30−9:50 和田鉄平 信州大学森林環境学研究室 「異なる標高に生育する信州カラマツの形成層活動再開時期 」

9:50−10:10 涌井幸子 信州大学森林環境学研究室 「秩父におけるブナの肥大成長の季節変化」

 

10:10−10:30 休憩

 

10:30−10:50 庄 建治朗 名古屋工業大学都市社会工学科 「琵琶湖岸のエノキに見られた1896年琵琶湖大洪水の「洪水輪」」

10:50−11:10 山田祐記子 京都大学樹木細胞学分野 「ハリエンジュliving wood fiberにおけるデンプン貯蔵」

 

11:10−11:20 休憩

 

11:20−12:00 総合討論

今後の同位体年輪気候学研究が進むべき方向について2つの話題提供の後、共同プロジェクト申請について等、討論を予定

・中塚武「東アジアにおけるMilleniumスケールの古気候研究の現状と今後の方向性」

・香川聡「安定同位体による木材の産地識別」(参考資料

・教科書の編集

・他、話題があれば提供してください。

 

12:00−13:00 昼食 和風レストラン桂(地図 )等

 

13:30〜 同位体講習

炭素同位体年輪気候学の基礎(香川聡)

酸素同位体年輪気候学の基礎(中塚武)

炭素・酸素同位体比の分析法(香川聡)

元素分析計の立ち上げ(以後全て香川聡)

 

9月14日(月)

年輪試料の切り分け、粉砕

炭素同位体比分析

(装置の調子にもよりますが、午後2−3時頃には終わると思います)

 

現在、講演者を含め40名が参加予定です。

 

締め切り:

8月9日(日) 宿泊仮予約申し込み締め切り

8月16日(日) 発表申し込み締め切り、宿泊本予約締め切り

8月30日(日) 要旨原稿締め切り A4で1−2枚程度、最高4枚まで要旨の例

9月11日(金) 参加申し込み締め切り(延長しました。宿泊予約はすでに締め切っているので、宿泊

が必要な方は自分で牛久駅近辺のホテルを手配してください。同位体講習は定員に達しました。参加の際

は必ず以下の内容で申し込みメールをお送りいただくようお願いします。)

 

参加・発表申し込み先・問合せ先: (独)森林総合研究所 組織材質研究室 香川聡

E-mail:akagawa(アットマーク)ffpri.affrc.go.jp Tel:029-829-8301 Fax:029-874-3720

参加希望の方は以下を記入の上、メールまたはFAXにてお申し込みください。

1) 氏名:

2) 所属:

3) 電話番号:     携帯電話番号:

4) e-mail アドレス:

5) 発表の有無:(有の方はタイトルを記入ください。仮称でも結構です)

6 )宿泊の有無:(例:912日、13日、14日宿泊希望)

7 )懇親会参加の有無:

8 )同位体分析講習への参加の有無:

 

トップに戻る)    シンポジウムHP http://cse.ffpri.affrc.go.jp/akagawa/soshikinenrin.htm

線吹き出し 2 (枠付き): 実産地
線吹き出し 2 (枠付き): 推定産地

極東ロシア(ヤクーツク)産のアカマツ1個体の年輪の炭素同位体比を1年毎に分析し、世界中の降水量データとの相関を計算し、相関が最大になる地点として産地を推定した例。

同じ個体の年輪幅を1年毎に測定し、世界中の降水量データとの相関を計算した例。

安定同位体比による木材の産地識別(総会で紹介)

線吹き出し 2 (枠付き): 実産地