照明の調節など基本中の基本で、顕微鏡を使うならもちろんできて当然です。が、顕微鏡術って案外ちゃんと教わらないものだったりもします。高価で高性能な業務用顕微鏡が、かわいそうにちゃんと調節してもらえていなかったり、掃除もろくにしてもらえていなかったり。まあ私もレンズやプリズムをかびさせたことがあるので偉そうなことは言えないのですが。
「今さら聞けない」みたいな超基本的なことだけをさらっと。研究用として一般的なケーラー照明内蔵の顕微鏡の、一番基本的な最低限の準備。プレパラートを載せるステージの下にあるのがコンデンサ。絞りにはたいてい台座に組み込まれている「視野絞り」と、コンデンサに組み込まれた「開口絞り」の二つがあります。コンデンサ高さは一番上、絞りは二つとも開放からスタート。
電源を入れて、低めの倍率で何かプレパラートが見えるようにしておきます。次に、台座の視野絞りを一杯に絞ります。すると当然光源からの光が減って暗くなります。この状態でコンデンサを少しずつ下げて、視野絞りがくっきり多角形に見えるようにします。これが正しいコンデンサの高さ。視野絞りは観察範囲外に当たった光が散乱してノイズになるのを防ぐためのものなので、観察時には視野のすぐ外側まで開きます。次に、コンデンサについている開口絞りを絞っていきます。視野が暗くなり始めたところからさらにもう少し絞ったところが基本位置です。目盛りがあればそれを参考に、暗くなり始めたところ(対物レンズの開口数に相当するはずです)の7-8割くらいで。
たったこれだけ。もしそれまでのセッティングがいい加減だったら、調整の前後での見え方の違いにびっくりするでしょう。これでもまだまだいい加減ですが、やらないよりははるかにマシです。なお、コンデンサ絞りは上記の通り対物レンズの開口数によって最適絞り値が違います。倍率(対物レンズ)を変えるたびに調節して下さい。もちろん倍率によって視野も変わりますから、視野絞りも同時に変えるのが本当です(観察だけの時はよく手抜きしますが)。コンデンサ絞りのことを焦点深度調節レバー/リングだと思っている人もいますが、そういう人はかえってその点だけは最適に調節しているかも知れません。なお、カメラレンズの絞りと同じで、絞り込めば焦点深度が深くなります(ピントの合う範囲が広くなります)が、ピントがあったところの解像度は落ちます。
ちゃんと管理されていない顕微鏡では、コンデンサの芯出し(光軸合わせ)ができていないなんてこともざらにあります。その場合、上記のような方法でコンデンサの調節をしようとすると、最初のステップで偏った位置に視野絞り像が見えます。コンデンサの取り付け部あたりをよく見ると調節ねじ(XYの押しねじ+スプリングのこともあればスプリング1本にねじ2本のことも―後者はちょっと慣れが必要)があるはずなので、コンデンサ高さを合わせてから調節ねじをを少しずつ回して、視野絞り像が視野と同心円になるようにします。これで芯出しOK、続きの調整を。
本格的にでたらめなセッティングだった場合、ランプの芯出しができていなかったりします。ランプ切れ交換の後の調節を怠ったわけですね。拡散フィルターを抜いてランプハウスにある調節ノブを回して調節することが多いのですが、機種によって様々なので、マニュアルを見て下さい。とか書いていたのですが、一昔前のベストセラー機オリンパスBH2にはランプの芯出し機構がありませんでした。はは。必要ないように設計されているのでしょう。同世代のニコン機には自由度の高い芯出し機構があります。
顕微鏡術はとっても奥が深いものです。私は子供の頃に望遠鏡光学に接したことはありましたが、顕微鏡については自分が使う必要に迫られて基礎の基礎だけ触った程度です。本格的に追求したら、すごいことになるんでしょうね。