実体顕微鏡用ファイバー代替光源の作り方

ファイバー代替照明双眼実体顕微鏡の照明用光源としては、20世紀後半くらいから長らくハロゲンランプを用いたファイバー照明装置が使われてきました。よくある50Wくらいのハロゲンランプだと発熱も相当なもの(50Wなら45W以上ですし)になり、ランプは常に予備が必要なくらい消耗品であるにもかかわらず高価です。電源制御回路を含めた装置全体で軽く十万円を超えます。お手軽とはとても言えません。

これの代わりに使える(制限あり)LED照明装置を、秋葉原で1台あたり2000円以下で調達出来る部品で作ってみました。秋葉原の中でも「秋月電子」「千石電商」「あきばお~」の三店舗を回れば全部揃います(2011年末時点の情報)。似たような部品でも店によって大きく値段が違うのが秋葉原ですが、以下に挙げるリストはかなり最適化出来ているつもりです。

なお、制限というのは色再現性がやや劣るという点と、明るさの制御ができないという点です。シンチレーションタイプの白色LEDを使うため、ハロゲンランプほどきれいな連続スペクトルにはならないのは仕方ありません。明るさは、対象物との距離でカバーして下さい。いずれにせよ多分大して問題にはならないでしょう。

必要なパーツ

3W級白色LED・放熱板付き秋月I-03776\250
3W級LEDドライバモジュール秋月M-04790\180
パワーLED用レンズ・ホルダーセット秋月P-04411\150
30mm角放熱器千石22UB-2CE5など\105
30mm角DC12Vファン秋月P-02439など\100
DCジャック秋月C-00076など\40
吸盤付きフレキシブル一脚あきばお~4528483049805など\530
12V1A級スイッチング電源秋月M-01804など\600

LEDを放熱器に取り付けるには、サンハヤトの「固まる放熱用シリコーン」(千石で取扱い、\920)が最適ですが、別にこれでなくてもかまいません。私はシリコーンコーキング剤と普通の放熱シリコーンを1:1に混ぜたものをよく使います。そのほかの組み立てには適当な接着剤、1液式変性エポキシ(スーパーXとか)などを使います。当然のことながらこのほか適当な電線類、必要に応じてスイッチ、半田ごてと半田など基本的な工具が必要です。ちょっと凝るならカメラねじ用タップも。

組み立て方

まずはじめに、フレーム兼用の「30mm角程度で片面が平らな放熱器」をフレキシブル一脚に固定出来るようにします。今回使ったフレキシブル一脚はちょっと凝っていて、雲台部からねじ部を取り外せるかわいらしいクイックシューのような構造になっています。当然作業は取り外して行います。簡単に片付けるなら、放熱器のフィンの間をやすりかハンドリーマーで削ってカメラねじが収まるようにして、接着剤で固定します。凝るならカメラねじ用タップでフィンの間にねじ溝を切り、カメラねじをねじ込んで固定します。

回路はごく簡単です。DCジャックからプラスとマイナスの線を引き出し(極性はACアダプターにあり)、LEDドライバモジュールの入力(極性なし)とDCファンの電源(極性注意)を並列に接続します。DCジャックからのラインは長くしても短くしてもいいのですが、私は短くしてジャックを放熱器に固定して作りました。電源、LED、ファンの3本の線を束ねるようにして半田付けして、その上からビニールテープとか使えるなら熱収縮チューブなどで絶縁してやります。次にLEDドライバモジュールの出力をLEDの端子に接続します(極性注意)。実装が容易な放熱板付きLEDなので、60W程度の半田ごてが必要です。放熱板なしのLEDなら小容量のこてで足りますが、放熱器への実装が少し難しくなります。

電気的につながったら、放熱器をコアにして実装します。まず、平らな放熱面にLEDの放熱板を接着し熱結合します。LED放熱板の真ん中にこんもりと熱伝導性接着剤(この程度の熱量なら普通の接着剤でもいいですが気泡が入らないようにする点にだけは注意)を盛って、放熱器にグリグリと押しつけて広げます。理想的には周囲から均等に少しずつはみ出すくらい。貼り付けたらLED素子を傷つけないように気をつけてクランプとか輪ゴムとか適当なもので仮固定して固化するのを待ちます。固まったら、レンズとホルダーを接着します。LEDが微妙にはまらなかったり端子が干渉したりするかも知れません。そういう場合は適当にホルダーを削るなどして対応します。

LEDが固定出来たら、放熱器にファンを取り付けます。放熱器の側面から風が当たるように、ねじ止め分の反対側、全体としてみればてっぺんに、接する三辺に沿って接着剤で固定します。セロテープなどで仮固定するのは言うまでもありません。LEDドライバモジュールは自然にLEDの裏側に来ます。固定してもしなくてもあんまり関係ありません。気になる人は適当に接着剤か何かで放熱器に固定すれば良いでしょう。絶縁だけはしっかり。ファンをLEDの反対側に取り付けてもいいのですが、その場合ドライバモジュールの置き場所に苦労するかも知れません。

放熱器にLED、レンズ、ファン、ドライバの全てが実装出来たら、ひとまず完成です。ACアダプターに接続すれば強烈な光を放つはずです。「ひとまず」というのはこれでは1台分だけだからです。通常の実体顕微鏡用光源には複数の光源を用いますから、必要に応じて同じものを作り、DCジャック以下で分岐させます(または分岐ケーブルを作ります)。ACアダプターは1Aタイプなら12Wありますから、少なくとも3台は駆動可能です。

全く同じ部品を揃えることはできないかも知れません。そのへんは創意工夫で何とかして下さい。

照明能力については、上記の通りに作ったもの1灯で50Wのファイバー照明を「圧倒」する照度が得られました。明るすぎて困ることはあまりありませんが、1W級LEDで作ってもいいですね。なお、照明ヘッドに放熱器など質量が集中しますのでバランスを取るのが難しいかも知れません。実験台に吸盤で吸い付けてしまえばいいのですが、材質の都合などで吸盤が効かないこともあります。そういうときにどうしたらいいかはそれこそ創意工夫して欲しいのですが、私はガラスシャーレに貼り付けて置くようにしています。古い腰高シャーレの身の方を使うとたいへんいい具合でした。