耐ウサギ型 ADR 土壌水分ロガー「1番機重装甲型」の製作記録


以下はあくまでも「どのような作り方をしたか」という製作記録です。具体的な商品名が出てきますが、これは一般に論文に出てくる商品名と同様に記録としてのもので、宣伝などをするものではありません。また、完成した装置がちゃんと役に立つかどうかは作った人の腕次第、完璧に作っても問題があったらごめんなさい。問題があっても自分で解決できる人向けです。

必要な工作技術の目安としては、ハンダ付けなどを時間さえかければプロ同様の仕上がりでできる、といったところでしょうか(プロとアマの違いはなんと言っても作業効率です)。ある程度工作には経験と自信のある人でないと難しいと思います。


仕様変更

初期設計ではブレードフレキ管でケーブルを守ることになっていましたが、鳥獣の専門家から「まだ囓りたくなる太さ、危ないかも知れない」との指摘を受け、後付けの対策を採ることにしました。ブレードフレキ管にφ15mm のスパイラルチューブを二重に巻くというものです。これでだいぶ太くなりますし、もっと細いケーブルにスパイラルチューブの三重巻きで外装にくっきり歯形を付けられても断線しなかったという経験があるので、あとは無敵の呪文「絶対だいじょうぶだよ」さえあれば…。


材料と工具

工具としては、ハンダごてとハンダ付け用具、金工鋸か精密鋸、平ヤスリと刃ヤスリ(鋸の目立て用の薄い菱形断面のヤスリ)、大型カッターナイフ、できればホットボンド、あれば塩ビ管カッターくらいが必要です。消耗品については、わかりますよね。


作り方

材料の加工

まず、水分計を分解します。もちろんプローブ自体には手を付けません。ケーブルの反対側にある制御回路部分の被覆をはがし、バラバラにします。プローブからのケーブルを取り外せばいいのですが、結果的にはほぼバラバラになるでしょう。後で組み直すのでしっかり記録をとるように。

塩ビ管を切断します。VP40 は長さ 50mm 1個だけ、VP20 は 40mm 1個と 5-8mm のリング1個が必要です。ネジニップルに合うナットが手に入れば、リングは不要です。プロ用ではない塩ビ管カッターでは VP40 は太すぎて切れないでしょうから、金工鋸でごしごし切ります。切れればもちろん鋸は不要。塩ビ管のVPは肉厚の水道用で圧力に耐えるもの、UPは排水など耐圧不要なもの。

ネジニップルに加工します。刃ヤスリ(のこぎりの目立てをするやつ)でねじ山になるべく直角に溝を彫り、さらに先の方の山を少し削って丸めて、ネジニップルの片側をタップのような形状にします。1個でかまいません。量産計画があるなら、うまくできたのは組み込まずに取っておいて工具(タップ)代わりにします。

塩ビ管(VP20)に加工します。本来ネジニップルは VP20 に微妙に入らないのですが、上記の即席タップにした側を使って注意深く内部に浅いねじ溝を彫ります。この作業が一番難しいところです。リングはナット代わりになるようにし、40mm のは片側にネジニップルを固定できるようにします。

ケースを加工します。ネジニップルにあうサイズのノックアウトを1個開けます。そこにネジニップルを通し、ナット代わりの VP20 を使って固定し、接着剤で固めます。

組み立て

プローブ部分を組み立てます。まず段違いソケットに VP40 と VP20 をそれぞれ塩ビ用接着剤で固定します。VP20 はねじ溝側を外に出すこと。シータプローブは VP40 にぴったりはまるので、組み立てた段違いソケットにケーブルを通して適当な深さまではめ込み、後からホットボンドやスーパーXなどはがせる接着剤で密封します。塩ビ用接着剤でがっちり固定すると、メンテナンス不可能になってしまいます。

全体を組み立てます。段違いソケットに固定した VP20 にネジニップルをねじ込み、ホットボンドなどで密封します。ブレードフレキ管にケーブルを通し、ネジニップルにねじ込みます。さらに、ケースに固定したネジニップルにケーブルを通し、ブレードフレキ管をねじ込んで固定します。

フレキ管の長さに切ったスパイラルチューブを巻き付けます。その上から、さらにもう1本巻き付けます。

ケーブルを必要な長さに切断します。プローブのシリアルナンバーはケーブルに通したチューブに書かれているので、保存するようにします。ケーブルはケース内である程度とぐろを巻くように余裕を持たせないと、追加加工がしにくくなります。あとは回路を元通りに組み直すだけです。熱収縮チューブなどできちんと絶縁しましょう、なんてことは言うまでもありません。

試作機(改修後)完成写真試作機の改修後の完成写真、ケーブル部分がだいぶぼってりした感じになりました。

試作機(改修前)完成写真改修前はこんなでした。しかし最初からこの形で作ったわけではなく、そのさらにプロトタイプとなるものがありました。


原型機完成写真 最初に組み立てた原型機です。フレキ管を使ったため強度は高かったのですが、反復屈曲に耐えないため使い勝手に問題があり、解体して部品を流用して試作機を制作しました。


運用

プローブはマニュアル通りに設置し、ロガーは近くに杭を打って縛り付けて固定します。私は小さなチャック付きポリ袋にシリカゲルを入れて錐でぶちぶち穴を開けたものをケースに同封して湿気対策にしています。当然のことながら木などのない開けた場所では直射日光の遮蔽を工夫する必要があります。雨もかからないにこしたことはありませんが、水の動きに影響すると測定値がおかしくなるおそれがあるので雨よけをするなら注意が必要です。


既知の問題

ケースの密閉性が高いため温度変化で内圧が変動し、特に暖まっていたところに急に雨が降ったりすると継ぎ目のわずかな隙間から水を吸い込むおそれがあります。一応これまで私の使った範囲では問題になっていません。