北海道に生息するクロテンとニホンテンの識別ガイド − 2種の識別点
森林総合研究所・北海道支所 平川浩文
下記の識別点を簡単なイラストにしてくれるボランティアの方を求めています。
識別点1:尾端が淡色であれば、ニホンテン。ただし、該当しない個体もある。
 ニホンテンの多くの個体で尾端が基部より淡色です。クロテンには見られないので、この特徴があればニホンテンです。ただし、個体差が大きく、この特徴がない、目立たない個体も少なくありません。さらに、尾端が基部よりやや暗色にみえる場合もあります。季節変化もあり、冬には目立たなくなります。したがって、「尾端が基部より淡色でないのでニホンテンではない」と判断できないことに注意が必要です。
 特徴把握のための注意点:尾の基部から先へかけた淡色化のパターンはさまざまです。徐々に変わる場合もあれば、境目が明確な場合もあります。後者の場合でも境目の位置は一定でありません。境目が明確で色あいが極端に変わる場合、境目から先の淡色部を見落とし、境目を尾端と見てしまうことがあるので注意が必要です。最も明確な尾端の色は白です。
 クロテンとの類似点・相違点:クロテンに類似する特徴はありません。
 
識別点2:顔に黒色部分があれば、ニホンテン。ただし、該当しない季節もある。
 ニホンテンには顔に黒色部分があります。クロテンには見られないので、この特徴があればニホンテンです。しかし、その大きさは季節で大きく変化します。夏には、黒色部分が顔面全体を覆うほど大きく、移行期には縮小して顔の先端部、鼻から目の周りにかけて見られ、真冬にはほぼなくなります。したがって、「顔に黒色部分がないのでニホンテンではない」と判断できないことに注意が必要です。
 特徴把握のための注意点:背景が暗い写真では、顔の黒色部分が背景に埋没してわかりにくい場合があります。その場合、夜で目が光っていれば、その位置を手がかりに鼻先までの顔の輪郭を想定してその色を判断する必要があります。夏毛から冬毛への移行期には、顔面の黒の消失部分は白い毛に変わります。このために顔の先端部に残った黒はその周囲の白とコントラストが明確です。冬毛から夏毛への移行期も同様です。
 クロテンとの類似点・相違点:クロテンにも顔にすこし暗めの毛を持つ個体がいます。ただし、その色は褐色で、ニホンテンの黒色とは大きく色合いが異なります。しかし、写真によってはこの違いがわかりにくい場合もあるので注意が必要です。クロテンの顔の暗色の毛の広がりはさまざまで、顔のごく一部だけに見られる場合から、鼻先から頭頂部にかけて比較的広い範囲に見られる場合もあります。
 
識別点3:体が明るい黄色であれば、ニホンテン。ただし、冬季に限る。
 冬季、(北海道の)ニホンテンは顔全体が白く、四肢の先を除いて首筋から尾端まで全身明るい黄色になります(四肢の先は暗色です)。この特徴は時期にかかわらずクロテンで見られないので、この特徴があればニホンテンです。
 クロテンとの類似点・相違点:クロテンでも、顔はニホンテンに似て白い感じに見える個体がいます。しかし、クロテンの体色は通常尾にかけて黒みを帯びており、ニホンテンのように全体的に明るい黄色になることはありません。例外として、一部地域で顔から尾・四肢の先まで全身淡色のクロテンが観察されていますが、その色もやはり明るい黄色ではありません。
 
識別点4:首筋から尾端にかけて色が濃くなれば、クロテン。ただし、全身淡色型の例外あり。
 クロテンは首筋から体後方、尾にかけて色が濃くなり、尾端が体の中で最も暗色で、通常黒になります。この配色パターンの特徴はニホンテンには見られません。したがって、この特徴があればクロテンです。顔は首筋よりもさらに明るい個体が多いですが、逆に首筋よりも暗色の毛を部分的に持つ個体もいます(識別点2参照)。クロテンの体色にも季節変化がありますが、この配色パターンの特徴は季節にかかわりません。ただし、識別点3でも述べたように、一部地域でこの配色パターンを持たず、顔から尾・四肢の先まで全身淡色のクロテンも観察されています。
 特徴把握のための注意点:首筋から尾端にかけての色合いの変化にはさまざまなパターンがあり、必ずしも徐々に変化するわけではありません。極端な例では、尾の基部までほとんど一様に淡色で、尾端だけが黒色の個体もあります。このため、首筋から尾端にかけてすべて見えていなければ、この特徴は把握できません。
 ニホンテンとの類似点・相違点:ニホンテンでも部分的には似た配色パターンを持つ場合があります。このため、首筋から尾端にかけてすべて見えていない場合、たとえ見える範囲で配色パターンが合致してもクロテンとは限りません。

補足:間違いやすい例

事例1:体色が全体的にくすんだ黄色あるいは淡色の場合。
 ニホンテンは季節変化の途中で、体色が尾も含めて明るい黄色ではなく、くすんだ黄色あるいは淡い褐色になる時期があり、これと識別点3で述べた体全体淡色の例外的なクロテンとは、少なくとも体色に限れば良く似た特徴を持ちます。ニホンテンであれば、この時期、顔の先端部、鼻先から目にかけての黒がその周囲の白とのコントラストで目立つので、顔が見えていれば、この特徴でニホンテンか淡色型のクロテンか識別可能です。尾は、先が基部より淡色であることがはっきり認められればニホンテンですが、そうでない場合、どちらにも決められません。さらに、この事例で、四肢の先まで淡色であれば淡色型のクロテン、四肢の先が暗色であればニホンテンですが、ニホンテンであっても四肢の先の暗色は背景と重なってわかりにくいことがあります。足先までよほどはっきり見えている写真でない限り、四肢が淡色に見えても、それだけで淡色型のクロテンと判断するのは危険です。
 
事例2:頭部から尾端まで全身の色が濃く、喉だけが明るい場合。
 これは夏季、ニホンテンにもクロテンにも表現上当てはまりそうな場合があります。夏毛のニホンテンは顔面全体が真っ黒なので、顔が見えていれば、この特徴の有無でニホンテンかクロテンか識別できます。顔が見えない場合、体全体が濃い色のため、名称からついクロテンと判断しがちですが、むしろニホンテンの可能性が強く疑われます。クロテンであれば、全体的に色の濃い個体でも、首筋から尾端にかけての体色の変化が見られるからです。このため、首筋から尾端にかけてすべて見えていて、この配色パターン(識別点4)がはっきりしなければ、クロテンではなく、ニホンテンです。顔も尾端も見えない場合、本ガイドで示した識別点による判断はできません。