私とAL-Mail―出会いと別れ

私がAL-Mailを使い始めたのは、Windows3.1時代でした。i486搭載のEPSON製PC-9800互換機で、画面解像度はわずかに640×480ピクセル、今となってはスマートフォンにも劣る数字です。OSはMS-DOS6.2+Windows3.1という16ビット環境。もちろん初代AL-Mailは16ビットソフトでした。バージョンは確か0.94bだったかな、ベータ版の頃でした。EthernetやTCP/IPを使うのも容易ではない時代、廊下の天井にはぶっとい黄色の同軸ケーブルが敷設されていたりしました。

当時はやっとSubject:に日本語を使っても怒られなくなったかな、という時代でした(たしかRFC2047より前くらいでしたから)。国産の電子メールソフトにはほとんど選択肢がなく、他にはWinBIFFというのを試してみたくらいでした。そんな大昔に作られたAL-Mailですが、今でも通用するくらい分かりやすいインターフェースを持つソフトで、一も二もなく飛びつきました。

AL-Mailには、[AL-Mailメーリングリスト]を中心に、たぶん相当にレベルの高いユーザーコミュニティがありました。電子メールのイロハはそこで教わったのだろうとあとになってみて思います。AL-Mail自体にもプラグインという仕組みが用意されており、ユーザーにより開発された機能拡張モジュールがいくつもありました。なにぶん前世紀のことなので詳細は憶えていませんが、いくつかのプラグインを入れて最強化した16ビット版AL-Mailは、1992年のナイジェル・マンセルのように超強力でした(なんじゃそりゃ)。少なくともその後の32ビット版、現行のAL-Mail32のすっぴん状態より優れた機能を実現していました。

AL-Mail32にもプラグインは開発されたのですが、今ひとつ私の好みと方向性が合わなかったこともあり、32ビット版は素の状態で使っていました。2000年問題対策なども比較的スムーズに行われ、その後もしばらくマイナーチェンジが続きました。現時点での最終バージョンは2006年のセキュリティアップデート版Version1.13aですが、WindowsNT6.x(Vista以降)への対応は行われませんでしたから、事実上開発は終了したものと思われます。他でも書きましたが開発者がIPAの連絡不能リスト入りしてしまうなど、完全に過去のソフトとなってしまいました。万一セキュリティに問題が見つかっても対策が行われるとは考えにくいので、セキュリティ上ももはや「使うべきではないソフト」でしょう。

と思っていたら2015年2月に突如セキュリティホール修正版1.13dがリリースされました。まだ死んでなかったんだ…。とはいえ後述の困った仕様という問題があるので、「使うべきではない」という意見に変更はありません。

私自身は単に好みの問題でWindowsXPとVistaはパスして、2009年までWindows2000を使い続けていました(ちなみに2000は発売当初から使っているので当然WindowsMeもパスしています)。そこからいきなりWindows7にジャンプしたので、Vista対応問題とは無縁でした。が、結局'00年代半ば頃に秀丸メールに移行してしまいました。

AL-Mailと別れて

'00年代半ばともなると有力な後継候補がいくつもありました。産総研(の少なくとも一部)で標準メーラーになっている「Becky! Internet Mail」(\4,200)や、フリー版もある「EdMax」(\4,500)は有名でしたし、最初はいろいろあったみたいですがジャストシステムの「Shuriken」(\3,650から)なんかもそれなりに使えるものになっていました。たぶん。マイクロソフトの「Outlook Express」はその先代(MSIMN)のあまりの不評ぶりと当時のマイクロソフトの日本語化力への不信(2010年に至ってもまたやらかしてくれました:MS10-090問題)から候補にも挙がらず、もちろんグループウェアクライアント「Outlook」なんか論外です。当時はまだ「Thunderbird」は世に出ておらず、まああっても今のあれはどうも趣味ではないのですが、オープンソース系の有力候補は知りませんでした。結局、Windows3.1の頃から愛用している「秀丸エディタ」の姉妹ソフト「秀丸メール」(\2,100)に落ち着きました。「秀丸エディタ」のユーザーには追加料金なしで使わせてくれる太っ腹なところも気に入りました。

秀丸メールは初期設定では3ペイン、つまり左側にフォルダ一覧、右上に開いているフォルダにあるメールの一覧、右下に開いているメールの本文が表示されるという設計になっています。しかし柔軟なカスタマイズが可能で、AL-Mailと同様に「2ペイン+別ウィンドウの本文」という設定にすることも可能で、私はその状態で最強化16ビットAl-Mail並み、いやそれをはるかに超える環境を手に入れて以来愛用しています。ユーザーインターフェース的には結局「AL-Mail命」なわけですね。

Al-Mailにしても秀丸メールにしても、いいところは本文を個別の(秀丸メールではいくつかまとめて)テキストファイル形式で保存してくれることで、デスクトップ検索との親和性が高く、昔のメールから必要な情報を取り出すことがきわめて容易です。秀丸メールには本体に正規表現まで使える強力な検索機能があります。また、マシンの更新時にはメールボックスフォルダを丸ごと移転することで簡単にニューマシンに移行出来ます。どこにメールが保存されているかも分かりやすいというのもメリットです。システム破損時のデータサルベージのような非常時にも保全すべき対象が明らかですから。

32ビット版の初期、Windows9xの頃はまだOSのファイルシステム自体があまり頑丈ではなく、たまにトラブルを起こすこともありました。しかしWindowsNT系列(2000以降)のファイルシステムNTFSでは信頼性も向上し、1メール1ファイルという仕組みで大量のメールを管理するのもあまり問題ではなくなりました。その点、AL-Mailは今でも通用するソフトなのかも知れません。

そう、あのたった一つの「仕様」さえなければ…。


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