これまでに私が使ったことのある温湿度計・データロガーについて、あるメーリングリストで紹介したときの文書を少し改変したものです。値段等の情報は、少し調べればわかりますのであえて省きました。一応2007年2月の時点で各メーカーサイトをチェックしてあります。…2007年!今では機械の世代も変わっていますが、時代のスナップショットとして残しておきましょうか。
湿度センサーの寿命も5年と長いですし、本体はIP54適合の防水になっているなど、野外調査にも使える機械です。電源は単4乾電池2本、10分データで半年は使えました。記録可能なデータ点数は温度湿度それぞれ8000点です。10分間隔で測定すると55日半、2ヶ月足らずの記録が可能です。
データ読み出しには別途コミュニケーションベースが必要です。そのため台数が少ないときには割高になるのと、Windowsで動く読み出しユーティリティの操作に少しくせがあるというかデータファイルをダブルクリックしても読み込んでくれないなどほんの少し一般的でない動作が見られるところが気になると言えばなりますが、問題なく使えています。
この機械の本体仕様で用途によっては困るかも知れないのが、記録中は測定値を表示しないという点です。消費電力低減のためか、記録中は液晶画面には記録中シンボルが出ているだけです。また、湿度が飽和に近いときデータが100%を超える値を示すことがあります。この領域では半導体湿度センサーはどうしても精度が落ちますので、やむを得ません。読み出しユーティリティで100%オーバーをカットすることもできます。カタログスペックでは一応全湿度範囲が測れることにはなっています。
野外調査のために設置するときは、雨よけ・直射日光よけのシールドないしシェルターを自作し、本体は密閉型ケースに入れてやりました。シールドの材料はバーベキュー用のアルミ皿と割り箸だったりします(^^;。呼び径13の塩ビ管の支柱に手すり用(かな?)のフランジを使って固定しました。一番上に浅い皿を2枚重ねにしてエポキシ接着剤でがっちり固定し、外周部の3本の貫通柱(割り箸)に底を抜き折り返してリング状にした(ババロア型あるいはしゃぶしゃぶ鍋型といいましょうか)深皿を順次固定してあります。センサーへのアクセスのためには下の皿を取り外すことになるため、下の皿は割り箸には固定せず支柱にホットボンドとガムテープで留めています。念のためにセンサーケーブルにはスパイラルチューブをかけました。こんなシールドでも結構製作には手間がかかるし、強度や通風性が(初めは)そこはかとなく不安なので、素直に完成品を購入した方が無難かも知れません(これでも案外丈夫ですが)。メリットは質量の小ささと熱伝導率の高さによる熱応答性の高さと直射日光の影響の少なさ(熱線をそこそこ反射するし吸熱分もすぐに大気に伝導放熱するはず)、のつもりですが、やっぱり風通しが何より大事ですよね。
この例ではロガーをタカチ電機のボックスに収納してありますが、市販のしっかりしたシールドを使うなら、丸ごとシールドの中に納めてもいいでしょう。ロガーは湿度センサーよりは丈夫ですし、ケーブルという脆弱な部分を露出しないですみます。シールド内部へのアクセスのよさ次第です。私の手作りシールドはその点において劣るので、ロガー別付けにしました。このボックスは開閉にドライバーが必要ですが、それさえあれば丸ごと収納よりアクセスは良好です。
フィールドで使うなら今ではふつう「小型防水データロガーTR-5xシリーズ」でしょうが、当初は温度計しかなかったこともあって、こちらは使ったことがありません。私よりもっと山奥に行く同僚が使っていたので、相当タフな機械なのでしょう。現在ではこの系統の無線対応タイプに湿度や電流電圧パルスなどを測定できるバリエーションが発売されています。
私が使っていたもの(TR-7xSシリーズ)はすでに製造終了で、現行の「温湿度・大気圧データロガーTR-7xUシリーズ」はその後継機種です。湿度センサーの寿命は1年、本体は非防水構造なので、野外での計測には多少コツが要ります。USBでパソコンに直結できます。読み出しユーティリティの操作はわりとふつうです。以下は旧機種の話です。
全体にやわなつくりと言ってしまうと言葉が悪いのですが、室内で使うには十分だと思います。同系統の温度2chロガーを冷凍庫用タッパーに入れて温室に設置して、自動灌水の水がかかりまくりの場所で運用しましたが、問題はありませんでした。なお、湿度センサーは水がかかると死にます。これは日置のものも同じで、ロガー本体が防水であってもセンサーは濡らしてはいけません。そのため水がかかる可能性があるなら必ず何らかのセンサーカバーが必要です。電源がとれるなら、ファンで強制通風して測定するのがいいでしょう。私はプラスティック製植木鉢で水よけカバーを作って、余り物のACアダプターとパソコン用DCファンで強制通風してやりました。水がかからないところでも段ボール箱で日よけを作ってファンで送風しています。
こちらは記録中も測定データを表示してくれます。記録しながら現在の温度・湿度をちょっと見たいこともある、といったときには便利です。
「やわ」とか言っていはますが、これも山の中に設置したことがあります。運悪く設置直後に台風の直撃を食らってぶっ飛ばされましたが、修復後はちゃんと機能していました。風が弱く直射日光の当たらないはずの林内に設置したので、上に書いた日置の装置で組んだセットより通気性重視で作ったセンサーカバーと、雨よけのひさし+冷凍庫用タッパーのロガーボックスを角材のセンサーポストにくくりつけて立てておきました。温室ででもそうですが、わざわざ密閉性のない冷凍庫用タッパーを使うのは、密閉した場合には温度変化で内部の圧力が変動することで水を吸い込んだりするおそれがあるからです。なまじ密閉性が高いと水を吸い込んでしまったとき抜けませんし。あと安くて加工しやすいから。リアルタイムデータを表示してくれますから、その近辺で作業をしていてひょいとセンサーポストを覗いて「うげー、気温33度湿度80%もあるー」などとげっそりすることができます。
私の経験上は、培養室や温室内の環境測定なら「おんどとり」、野外なら日置3641が便利でした。「ちょっと温湿度を見る」「台数が少ない」なら「おんどとり」、「あとでまとめて解析するだけ」「何台も使う」「風雨にさらされる」なら日置3641でしょうか。「おんどとり」の小型機の性格は、カタログスペックを見る限り(無線機能を別にして)日置のものに近いようです。いずれにせよ湿度センサーの設置には気を遣う必要があります。
海外製品もいろいろと入ってきています。パシコ貿易やメイワフォーシス(盟和商事)などで取り扱っています。読み出しユーティリティが変だったりして(といっては悪いですが感覚的にちょっと合わなくて)今ひとつ使い勝手がよくなかったりしますが、特徴ある機械がいろいろあります。Hoboシリーズは生態学者の間では定番ですね。高信頼性の国産機としてはコーナシステムのKADECシリーズも有名ですが、私の用途にはちょっと上等すぎるかも。
ボタン型自記温度計「サーモクロン」という、ボタン電池の親分のような形状をした機械もあります。そののシリーズには湿度センサーを追加した「ハイグクロン」という製品があるそうです。使ったことがあるのは温度センサーだけの「サーモクロン」なので、そちらについて。
サーモクロンは、ボタン電池を大きくしたような(直径17mm 厚さ6mm)形状の豆ロガーです。スターターキット(「解除番号」という読み出しソフトのアクティベーションコードのようなものを含む)が必要ですが、単価の安さが大きな特徴です。だからといって100個とか使うと回収したりデータを読み出したりする手間が大変ですけれど。元々は食品流通用のトレーに取り付けて温度管理をする、といった用途の製品です。
「バッテリー寿命が製品寿命」といういわば使い捨て仕様ですが、使ってみると意外なほどタフで、温度専用で防水性があるため裸で土に埋めても平気でした。これはわざとそうしたわけではなく動物に袋を破られてしまったのですが、ちゃんと機能していました。電池も結構、いやむちゃくちゃ持ちます。私は1時間データしかとっていませんが、3年経っても制御ソフトで読み出すとバッテリー残量は一杯でした。ただ…見えるとカラスに盗まれます。銀色なのがいけないのかも知れません。
設置には、小型のチャック付きポリ袋、例えば「セイニチ グリップス A-4」などに入れて、測定したい場所に適当に固定します。私は地温の測定に利用したので、土に埋めました。当然目印がないと行方不明になりますので、袋にマーキング用のテープ(非粘着性)の切れ端を入れてその一端を地上に出しておきました。テープごと口を閉じることも何とか可能ですし、多少隙間があっても袋をくるくると巻いておけばロガーまで濡れることはありませんでした。何かの間違いで行方不明になってしまったときは、全力で探しまくります。トイザらスで買ってきたおもちゃの金属探知機で見つけたこともあります。
記録可能なデータは2048点なので、1時間おきの測定であれば85日あまり、3ヶ月弱の記録が可能です。10分おきなら2週間。
このベンダーでは「オートクレーブロガー」という製品も取り扱っています。温度専用ですが、オートクレーブの中でちゃんと滅菌物の温度が上がっているかどうか測定できるそうです。すごいですね。