ブナ林をはぐくむ菌類

佐藤大樹@森林総研さんによる説明

ブナ林をはぐくむ菌類
金子繁・佐橋憲生 編
文一総合出版 1998
ISBN 4-8299-2129-3
定価1800円+税

 ブナ林に関する本は多く出版されていますが、菌類に視点を当てた本は多く
はないと思います。執筆者の一人として皆様のご意見ご批判をいただきたく思
います。
 鎌田氏と私でサナギタケの生態を扱いました(3章)。鎌田氏は個体群生態
学の専門家で、サナギタケによりどのように寄主であるブナアオシャチホコ
(蛾)の個体群が変動するかを述べ、佐藤が病気の感染のことについて述べま
した。


 執筆者
一章 金子繁、佐橋憲生、服部力、
二章 畑邦彦、奈良一秀、
三章 鎌田直人、佐藤大樹

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目次

はじめに

第1章 ブナの一生と寄生菌類
 1.ブナ林というところ
 2.菌類とよばれるなかまたち
 3.ブナの一生と寄生菌類
 4.実生と寄生菌類
 5.ブナの幼・成木と寄生菌類
 6.ブナと木材腐朽菌類
 7.ブナの病原菌−海外の菌との関係
 8.ブナの実と寄生菌類

第2章 ブナ林の共生菌とその役割
 1.内生菌
 2.マツの針葉の内生菌の特徴
 3.ブナの内生菌を調べる
 4.内生菌・腐生菌.病原菌
 5.さまざまな菌根菌
 6.外生菌根の特徴
 7.植物と外生菌根菌の協力関係
 8.森林のなかでの菌根菌

第3章 生物どうしの関係が保つ安定性
 1.病気は困りものか
 2.昆虫病原菌
 3.ブナアオシャチホコをめぐる生きものたち
 4.小さな寄生者たちの大活躍
 5.サナギタケに注目!
 6.大発生はなぜ止まる
 7.周期性の謎を解く

森林の菌類に関心を持った読者のために

おわりに

主な参考文献
索引
執筆者一覧

畑邦彦@千葉大真菌医学(元京大応用植物)さんによる説明

ブナ林に限った話ではなく、森林における菌類と樹木の相互関係について
幅広く取り扱おうとしたという点では割とユニークなものになっているの
ではないかと思います。多分この本の意識としては、「ブナ林」を「森林」
と置き換えて考えてもそれほど違いはないと思います。

私が担当しましたのは、

> 第2章 ブナ林の共生菌とその役割

のうち、

>  1.内生菌
>  2.マツの針葉の内生菌の特徴
>  3.ブナの内生菌を調べる
>  4.内生菌・腐生菌.病原菌

です。

1.は内生菌全般の紹介、2.は私の博士論文の概略、3.は本の
タイトルに敬意を表して(笑)論文を調べた結果、4.は日頃考え
ていたことをこの機会にまとめてみたものです。ページ数的には3.
と4.はごく短く、前半がメインです。一応私の京大時代の研究の
集大成(←おおげさ)のつもり。

グラスエンドファイトについてはこれまでにも紹介されていますが、
樹木の内生菌について本格的に取り扱っている日本語の本としては
初めてということになると思います。

注:所属等は書かれた当時のものです。

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